このコラムでは、介護福祉事業の特徴や特有の事故について具体例を挙げながら紹介しています。
これから介護福祉事業の起業をお考えの方や、すでに開業されている方にとって、保険相談のきっかけとなれば幸いです。
高齢化社会が進む現代の日本で要介護高齢者もまた増え続けています。それに伴い、要介護高齢者に対する“介護が必要な期間”も長期化しているのが現状です。
では介護をする側はどうかというと、少子化や核家族化の進行だけでなく、介護をする家族の高齢化等によって、家庭の中だけで介護をすることの限界が迫っていると言えるでしょう。
こういった社会背景を踏まえて、政府は高齢者の介護を社会全体で支え合う仕組みを構築するために介護保険制度を作りました。介護保険の特徴は、単に身の回りの世話をするということだけではありません。
高齢者の自立を支援する「自立支援」、利用者の選択によって保健医療サービスや福祉サービスを総合的に受けられる「利用者本位」、そして給付と負担の関係を明確にした「社会保険方式」を採用していることが挙げられます。
高齢者が尊厳を保持し、それぞれの能力に応じて自立した日常生活を送ることができるよう、地域社会で介護サービスの充実を目指すのが介護保険の基本理念なのです。
今後さらに少子高齢化が進むと、75歳以上の人口が急激に増加し、要介護高齢者も増えることが見込まれます。

出典:高齢化の現状と将来像(内閣府)
内閣府の公表している資料からも、日本の総人口は減少していくにも関わらず75歳以上の高齢者が占める割合は大きくなっていくと想定されていることがわかります。
家庭内ですべての介護をするのが困難となる中、介護保険で受けられるサービスは大きく分けて3種類あり、これらを活用して高齢者の自立を支援していくことがますます重要となってくるでしょう。
社会全体で支え合うことにより、家族の負担を減らすことにもつながるのではないでしょうか。
介護保険で受けられるサービスは、
① 居宅介護サービス
② 施設サービス
③ 地域密着型介護サービス
の3種類に分けられます。

出典:介護保険制度の概要(厚生労働省)
介護福祉士が利用者の自宅を訪問して日常生活の介助を行う「訪問介護」や、利用者がデイサービスセンターにて介護サービスを受ける「通所介護」など、自宅に住みながら利用できるのが居宅介護サービスです。
入浴や食事の支援が受けられ、短期間施設に入所するショートステイも含まれます。
「介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)」「介護老人保健施設」「介護療養型医療施設」「介護医療院」の4つの施設に分類されるのが施設サービスです。
「介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)」は、要介護高齢者が生活するための施設で、食事・入浴・排泄・健康管理など日常生活の支援を受けながら長期間入所でき、終身利用も可能です。
「介護老人保健施設」は、日常生活の支援を受けるとともにリハビリに注力することで、可能な限りの在宅復帰を目指すことを目的とした施設です。
「介護療養型医療施設」は、要介護高齢者の中でも医療の必要な方が長期療養をするための施設で、病院や診療所に入院する高齢者に対して療養上の管理や看護などの必要な医療を提供しています。
「介護医療院」は、長期にわたり療養が必要な要介護高齢者のための施設で、療養上の管理や看護などの必要な医療提供に加え、日常生活の支援も行います。
要介護高齢者が、今までの住み慣れた環境で地域住民と交流を持ちながら介護サービスを受けられるのが、地域密着型介護サービスです。
市町村によって指定された事業者が「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」や「夜間対応型訪問介護」などのサービスを行います。
日本の将来にとって必要不可欠な介護福祉事業ですが、少子高齢化の急速な進行により既に慢性的な人手不足が起きている状況です。
要介護高齢者や家族に安心して介護サービスを受けてもらえるように、各事業所は介護事故の防止マニュアルを作成したり、内部や関連事業所で情報の共有化を行ったりしていることでしょう。
どのような場面でどのような事故が起こりうるか事前に想定・把握しておくことは大変重要です。
ただ、どれだけ事故防止の対策を行っていたとしても、介護事故が起きてしまうことはあります。
ここでは、過去の事故例とともに、事故の被害を拡大させないための迅速な対応や防止策について紹介していきます。
ベッドから車いすへの移動を介助する際に、利用者がバランスを崩すことで床に転倒をしてしまうケースや、車いすのブレーキが利いておらず車いすごと転倒するケースです。
介助をしている職員が足を滑らせてしまい、利用者が転倒することで大腿骨骨折に至るケースも多いそうです。
車いすの基本操作確認を怠らないことや、1人でなく2人で介助するなどの人的環境整備だけでなく、ベッドの高さや配置を改善する方法も検討が必要でしょう。
また、施設内を移動する際に段差につまずいたり、廊下に水濡れがあり滑ったりする転倒事故もあります。
利用者の身体能力を把握することで、杖の使用や移動距離の見直しが必要となるかもしれません。
ベッドやストレッチャーからの転落・落下事故が多い中、階段からの転落事故も多く報告されているそうです。
忙しい時間帯に職員の目が行き届かないなどの発生要因が指摘されているため、職員同士の声かけ方法を見直すなどの対応策が有効な場合もあります。
職員が目を離した瞬間や、食事中の発作が原因で誤嚥につながることがあります。
誤嚥とは、食べ物や飲み物が食道ではなく気管に入ってしまうことで、一般的に高齢者は嚥下機能が低下していることから誤嚥の危険性は高いといえます。
日頃から誤嚥が発生した際の対応の訓練を実施したり、救命器具を配備したりすることで、迅速な応急措置がとれるでしょう。

介護福祉施設において、念頭に置いておくべきは介護事故のみではありません。ほかの業種でも起こりうる事故ではありますが、介護福祉施設で起こった場合に想定される事故事例を紹介していきます。
介護サービスの内容によっては、介護車両を導入して利用者の送迎を行っています。
当然のことながら、運転手は利用者が快適に移動できるよう安全運転に配慮していることでしょう。
しかし、どうしても交通事故の可能性を排除することはできません。
事故の形態によっては、相手の車両や搭乗者・歩行者にケガがあるかもしれませんし、送迎中の利用者は高齢による身体機能の低下によって負傷度が高くなるかもしれません。
運転手の過失があった場合は刑事責任が問われますが、事業者としての民事賠償責任が問われたり、行政処分を受けたりする可能性もあります。
介護施設によっては、消防法で自動火災報知機や火災通報設備・消火設備・避難経路の設備設置が義務付けられています。
また、日頃から施設長・防火責任者を中心に職員全体で火災が起こらないよう周知徹底をしていることでしょう。それでも、予期せぬ火元から火災が発生することはあります。
火災が発生すると、炎だけでなく煙による一酸化炭素中毒にも注意が必要です。
火災が発生しているとわかっていても、利用者によっては自力移動ができない場合も考えられます。夜間など限られた人員でも、死亡事故を防ぐために優先順位を意識した避難誘導が重要になってきます。
高齢者にとっての食事は、必要な栄養を摂取するためだけではなく、生きがいを感じたり生活リズムを整えたりするために大変重要な意味があります。
介護士や栄養士は、利用者が食事を楽しめるように、様々な工夫・努力をしていることでしょう。
ただ、高齢者の中には免疫機能が低下している方もいます。食中毒が死亡事故につながりかねないため、十分な食中毒予防対策が必要です。
日本の将来にとって欠かすことのできない介護福祉事業ですが、利用者が高齢であることにより、事故が重篤化する可能性は否定できません。
自動車事故には自動車保険、火災事故には火災保険、食中毒事故や介護事故には賠償責任保険の加入をすることで、費用面や法律面で幅広く補償されます。
人手不足が深刻化している業界でもありますが、職員のケガや病気に備える保険に加入することで離職率を下げる効果も期待できます。
ぜひ一度、保険プランニング大分に保険の相談をしてみませんか。