法人保険で節税はできないって聞いたけど、本当ですか?
法人保険は加入すると、どんなメリットがあるのか知っておきたい!
法人向け生命保険は保障を目的として加入する為、節税効果はありません。しかし節税としての効果はなくとも、企業を持続的に運営していくうえでのメリットは大きいといえます。
本記事では法人保険へ加入するメリット・デメリットについてお伝えしますので、ぜひご覧ください。
2023年現在、法人保険は節税としては活用できません。
法人保険の保険料を支払う際に経費として計上すると、その時点において法人税の減税が見込めるので一見節税になるように感じます。
しかし、いざ保険金が支給されると収入と見なされ、法人税が発生するのです。
法人保険は節税にはならず、「本来支払うべき法人税を一時的に先送りしている」と考えるといいでしょう。
法人税は節税にならないとお伝えしましたが、2019年の税制改正までは節税対策になるとされていた経緯があります。
税制改正の前後で、法人保険における経理処理がどのように変わったのかについてお伝えします。
税制改正前は法人保険の保険料の100%や50%などの一定額を、経費として損金扱いにできました。※損金とは、法人税法において企業の資産を減少させる経費や損失を表します。
つまり、法人保険の保険料を損金にして企業の利益を少なくすることで、「法人税を支払う額を減らし節税につながる」という考え方です。
また契約してから一定の期間経過したのちに解約すると、支払い済みの保険料に近い額の解約返戻金を受け取れる法人保険がありました。
解約返戻金は資産と見なされ課税対象になりますが、役員への退職金や事業継承などで損金扱いにする「出口戦略」をおこなえば、節税効果を期待できるとされていました。
しかし、節税目的による法人保険の活用は、国税庁から好意的に受け止められることはなく、「バレンタインショック」とも呼ばれる税制改正が2019年におこなわれたのです。
2019年の税制改正では節税に活用されることの多かった、定期保険と第三分野の保険について焦点を当てられました。
ここからは税制改正における、法人保険の変更点を2つお伝えします。
2019年の税制改正後の経理処理ルールは以下のように、定期保険の最高解約返戻率によって、保険料を損金に計上できる額が異なります。
区分 | 資産計上期間 | 資産計上額 | 取崩期間 |
最高解約返戻率50%超70%以下 | 保険期間の開始の日から、当該保険期間の100分の40相当期間を経過する日まで | 当期分支払保険料の額に100分の40を乗じて計算した金額 | 保険期間の100分の75相当期間経過後から、保険期間の終了の日まで |
最高解約返戻率70%超85%以下 | 当期分支払保険料の額に100分の60を乗じて計算した金額 | ||
最高解約返戻率85%超 | 保険期間の開始の日から、最高解約返戻率となる期間(当該期間経過後の各期間において、その期間における解約返戻金相当額からその直前の期間における解約返戻金相当額を控除した金額を年換算保険料相当額で除した割合が100分の70を超える期間がある場合には、その超えることとなる期間)の終了の日まで(注) 上記の資産計上期間が5年未満となる場合には、保険期間の開始の日から、5年を経過する日まで(保険期間が10年未満の場合には、保険期間の開始の日から、当該保険期間の100分の50相当期間を経過する日まで)とする。 | 当期分支払保険料の額に最高解約返戻率の100分の70(保険期間の開始の日から、10年を経過する日までは、100分の90)を乗じて計算した金額 | 解約返戻金相当額が最も高い金額となる期間(資産計上期間がこの表の資産計上期間の欄に掲げる(注)に該当する場合には、当該(注)による資産計上期間)経過後から、保険期間の終了の日まで |
引用:国税庁「第3節 保険料等 定期保険等の保険料に相当多額の前払部分の保険料が含まれる場合の取扱い」
【最高解約返戻率が50%以下】であれば、法人保険の保険料のすべてを損金にできます。
しかし最高解約返戻率が50%を超え、割合が高くなればなるほど損金算入可能額は少なくなる仕組みになっています。
たとえば【最高解約返戻率が50%超~70%以下】の場合を見てみましょう。
保険期間が20年と仮定すると、保険開始から40%の期間である8年間は保険料の60%を損金計上します。
また同じ保険期間で【最高解約返戻率70%超~85%以下】の場合は、保険開始から40%の期間である8年間は保険料の40%が損金算入額となります。
【最高解約返戻率が85%を超える】場合はさらに損金算入額が減り、法人保険に加入しても節税効果は得られないといえます。
第三分野の保険のうち【保障が一定期間】・【保険期間が終身・全期払い】の保険の場合は「定期保険の保険料は最高解約返戻率によって損金にできる額が変動」で解説した経理処理をおこないます。
【保険期間が終身・保険料短期払い】の第三分野の保険については、年間保険料が30万を超える場合は損金を以下の式で求め、残りを資産計上する必要があります。
年間保険料×払込期間÷保険期間
※保険期間は(116歳-契約年齢)
保険料の払込期間を終えたあとは被保険者が116歳になるまで、計算式で算出された金額を損金算入して、資産計上していた保険料を取り崩します。
このように年間保険料30万円を超えると損金算入額に制限が出ますが、逆にいえば【30万円以内であれば全額損金算入できる】ともいえます。
1人で複数の保険契約をする場合は保険料を合算する必要がある点や、契約後は当然ですが保険料を支払い続ける必要がある点など、注意しなければならないこともあります。
法人保険には、主に以下3つの加入するメリットがあります。
- 事業リスクに備える
- 事業継承時に相続税の資金にできる
- 福利厚生の充実に役立てる
順番に見ていきましょう。
経営者にもしものことがあったとき、法人保険に加入していると、事業リスクに備えられます。
法人保険の場合、【被保険者は経営者】・【契約や保険金の受け取りは法人】となり、経営者に何かあっても従業員への給与や取引先への支払いなどを滞らせることなく、企業の信用を維持できます。
保険金を経営資金にあてられるため、取引先との契約解除や銀行からの融資打ち切りなどの不安を抱えずにすむでしょう。
事業継承の際、後継者は自社株評価にもとづいて計算された相続税の支払いが発生しますが、法人保険の保険金を活用できます。
保険金を元手に企業が自社株を後継者から買い取ることで、相続税の支払いにあてられるでしょう。
相続税の支払いが高額になることは多く、金額を目の前にして支払いが難しいとなれば、後継者が事業継承を躊躇してしまう事態にもなりかねません。
法人保険に加入していれば、いざというときに相続税への資金活用ができるので安心です。
法人保険のなかには以下のような補償金の支払いが可能な、従業員の福利厚生を充実させられるプランがあります。
- 弔慰金
- 病気やけがの見舞金
- 死亡退職金
- 入院費用
何より従業員が安心して働ける場所を、経営者として提供できるでしょう。
法人保険にはメリットだけではなく、以下のようなデメリットもあるので把握しておきましょう。
- 企業の運営資金が不足する可能性がある
- 解約返戻金の受け取り金額で損をする可能性がある
順番に解説します。
当然ながら法人保険を契約すると、保険料の支払いが毎月発生します。
たとえ今後のためと思っても、保険料が高ければ企業の運営資金が不足する可能性があるので注意しましょう。
事業の現状に合った法人保険の契約や見直しをするために、法人保険の専門家へご相談ください。
自社の今後を見据えた的確な保険を紹介してもらえ、資金繰りの悪化を防げるので安心して契約できるでしょう。
法人保険の解約返戻金は一定ではなく、解約時期によって金額が変動します。
とくに早期解約した場合は、「思っていたより返戻金が少ない」となる可能性があるので、基本的には当面解約する予定がないことを前提に契約する必要があります。
法人保険では、必ずしも想定していた金額を受け取れるとは限りません。
しかし事業リスクへの備えや、事業継承をスムーズに実施するリスクマネジメントとしての法人保険への加入メリットは、非常に大きなものです。
さまざまなリスクを抱える法人だからこそ、節税のほかにも目を向け、経済的な損失へ法人保険で備えておくと安心でしょう。
本記事では法人保険で節税できない理由をお伝えするとともに、メリット・デメリットについてお伝えしました。
法人保険への加入は事業をスムーズに持続させていくための資金を備えたり、従業員が安心して働ける場所を提供したりできる多くのメリットがあります。
保険プランニング大分は専門家として、法人保険をご検討されている方へ企業を支える最適な保険を提案させていただいております。
法人保険についてわかりやすく、丁寧にご説明いたしますので、お気軽にご相談ください。