マンションで暮らす場合の損害賠償について考える

日本のマンションはいつから?

 大正13年5月に、関東大震災の義援金から設立された「財団法人同潤会」が建設した同潤会アパートが、日本のマンションの始まりとされている。
 昭和40年代に入ると、いわゆる団地ブームが到来し、40年代後半には、中間所得者層を対象とした大衆型マンションが増大した。

マンションで暮らす人はどのくらいいるか?

 2024年(令和6年)2月1日現在の日本の総人口は、1億2399万人である。65歳以上人口は、3622万5千人で、うち75歳以上人口は、2002万2千人である。(出典:「人口推計」(総務省統計局)

 2018年(平成30年)10月1日現在における我が国の総住宅数は6240万7千戸、総世帯数は5400万1千世帯となっている。(総務省統計局統計調査部国政統計課)

 2022年度(令和4年度)末時点の、マンションストック総数は、約694.3万戸であり、これに2020年(令和2年)国勢調査による1世帯当たり平均人員2.2人をかけると、約1,500万人となり、国民の1割超が居住している推計となる。
 
 マンションに住む区分所有者の永住意識が年々高まっており、マンション総合調査によれば、1990年代半ばから「永住するつもり」の割合が「いずれは住み替えるつもり」を上回り、直近では過去最高の割合(62.8%)となるなど、マンションに対する住まい方の意識も変化している。
 
 現在、マンションを巡っては、「2つの老い」と言われる建物と居住者の両方における高齢化が急速に進行している。

マンションで暮らすリスクとは?

 朝日新聞デジタル2023年(令和5年)7月1日17時30分によると、「神奈川県逗子市で2020年2月、市道に面したマンション敷地の斜面が崩れ、土砂の下敷きになって県立高校の女子生徒(当時18)が死亡した事故をめぐり、遺族がマンションを区分所有する住民や管理会社などに約1億2千万円の損害賠償を求めた訴訟で、住民側と遺族の和解が横浜地裁で成立したことがわかった。」とのこと。
 
「遺族側の弁護士によると、住民側が総額1億円を賠償金として支払う。差額の支払いを求め、管理業務の委託を受けていた管理会社との訴訟は継続するという。」
 

 

 区分所有の分譲マンションの敷地内にある東側の斜面が突如崩れて、通行人を襲った事故である。

 国土交通省国土技術政策総合研究所の調査によると崩落の主因は、「乾湿、低温などにより風化した凝灰岩が未風化の岩の上を滑って崩落した。」と結論付けた。

マンション管理組合に責任があるのか?

 マンション共用部で発生した事故の場合には、マンション管理組合または、マンションの区分所有者全員が責任を負うことになる。

 マンションの外壁のタイルが剝がれて落下し、来客の車に損害を発生させた場合や、マンションの給排水管の本管など共用部分の瑕疵によって、漏水事故を発生させた場合など、原因が明らかで、賠償責任がある場合には、マンション管理組合が、管理義務違反に基づく損害賠償責任を負うことになる。

 今回の事例のような場合、マンション管理組合に過失がない場合でも、設備の設置や保存に瑕疵がある場合には、マンション管理組合または、マンションの区分所有者全員が責任を負うことになる。〈(債務不履行による損害賠償)民法415条、(不法行為による損害賠償)民法709条、(土地の工作物等の占有及び所有者の責任)717条。〉

マンションの区分所有者の責任は?

 次に、マンションの区分所有者が、個別にその責任を問われるケースを考えてみたい。
 マンション区分所有者の専有部分から発生した漏水事故により、階下の区分所有者の財産に損害を発生させた場合は、階下の専有部分の復旧費用を負担する責任が発生する。
 階下の損害が共用部分である場合には、マンション管理組合への損害賠償責任が発生する。

 漏水事故について、マンション共用部の排水設備の瑕疵なのか、マンション区分所有者の過失なのか、責任の所在がどこにあるのかを明確にすることが重要だ。  
 そのためには、漏水箇所及び漏水原因を特定することが必要である。

 マンションの共用部分から発生した漏水事故である場合には、マンション管理組合の賠償責任が発生する。マンションの専有部分から発生した漏水事故の場合は、区分所有者が被害を受けた方への損害賠償責任を負うことになる。

 また、賃貸住宅の場合は、漏水事故が専有部分で発生し、この専有部分を賃借している人の不注意が原因で階下に損害を発生させた場合には、賃借人が、階下の被害者に賠償する責任が発生する。

リスクに備えるには?

 まずは、毎日の管理業務の中で、異常を見逃さないこと。定期的な、建物・設備・構築物などの点検を実施すること。異常を認めたときは、すぐに対応をすること。
 そのうえで、賠償資力を準備すること。そのためには、修繕積立金を計画的に行うこと、管理費計画を作成し、賠償責任保険の加入をすること。

どんな保険が必要になるか?

 

 まず、マンションの共用部分に関しては、マンション管理組合が契約者となって申し込む「施設賠償責任保険」がある。
日本国内で、マンション管理組合が所有、使用もしくは管理するマンション共用部分の欠陥や、管理上のミス、または、マンション共用部分の維持・管理業務の遂行に伴う偶然な事故により、他人の身体を傷つけたり、財物を損壊した結果、法律上の賠償責任を負った場合に保険金が支払われる保険である。

 次に、マンションの区分所有者が責任を負う場合である。これは、個人が所有する区分所有部分から、不注意で漏水させて階下に損害を発生させたり、ベランダから誤って布団を落下させて他人にけがをさせたり、他人の物を壊したりした場合に、法律上の損害賠償責任を負う場合である。

 これに備える保険として、個人が加入する「個人賠償責任保険」がある。
 これは、日本国内、国外を問わず、記名被保険者、その配偶者、またはこれらの方の同居の親族・別居の未婚の子が日常生活における偶然な事故を起こした場合に備える保険で、居住居室の所有、使用または管理に起因する偶然な事故だけでなく、自転車運転中の事故などにも、対応している。

他人に貸している場合の所有者の責任は?

 さらに、区分所有者が賃貸した専有部分に賃借人が居住する場合である。この場合は賃貸した区分所有者が、土地工作物責任(民法717条1項)に基づく損害賠償責任を負うことになる。

 同様に、漏水事故を考えてみると、土地工作責任は、まずは、建物を現実に使用している賃借人が負うことになるが、賃借人が損害発生を防止するために必要な注意を行っている場合は、専有部分の区分所有者が責任を負うことになる。

 したがって、マンションの賃貸借においては、賃借人には漏水した給排水設備を管理・補修する義務まではないので、通常の使用によって漏水が発生した場合には、賃借人ではなく区分所有者が法律上の賠償責任を負うことになり、区分所有者が、「施設賠償責任保険」に加入して備えることが必要となる。

安心して住めるのはやっぱりマンション?

 マンションは利便性の高い立地にあることが多い。施設や交通機関の近さ、緊急時の人の目など、老後の生活にも欠かせない条件がそろっていることがマンション選びの決め手となる。
 また、マンション内もバリアフリーが整備されており、セキュリティ面の安心感がある。管理組合や、管理会社によって、管理や修繕の計画が立てられている。
 利便性や、安全性に優れたマンションを、終の棲家として選ぶケースが増えている。

 安心して住み続けるために、必要な保険への加入をご検討ください。
 ご相談は、株式会社保険プランニング大分まで。